本『2ちゃんねる宣言』(井上 トシユキ)の感想

単行本の初版は2001年12月。

日本のインターネットの大きなコミュニティ「2ちゃんねる」について書かれていた本。読んでいると、当時の2ちゃんねるやインターネットの匂いがしてくる。タイムスリップしたような感じ。

今はみんながスマートフォンをもち、手軽に生活に密着したインターネットの使い方をする時代だが、この本の時代はその前。

インターネットが従量制から定額制になって普及率が上がり、多くの家庭で PC でインターネットをするようになり、インターネット人口が増えていった時代にユーザを取り込んで行った2ちゃんねる

以下のところが面白かった。

初期に考えられていた2ちゃんねるの役割

  • 本業(ホームページ制作など)のための広告媒体
  • いろんな人が集まるサイトを作れば、それが集客装置になり、本業に繋がるだろうと考えてやっていた。しかし、途中からはそれはどうでもよくなった

インターネット上のサービスの中で起きた問題の責任の所在

運営スタンス

  • 当時の2ちゃんねるの運営スタンスは(今もそうかもしれないが)、基本的には「場の提供」。
  • ユーザが使いやすい機能がある(匿名、トリップ)、ユーザによるコンテンツ(書き込まれた情報)が溜まりやすいシステムを狙う
  • Consumer Generated Media

匿名

  • 誰でも匿名で何でも書ける(NGワードはある)。実態が見えない集団による書き込みサイトのような側面もあるが
  • 一方、管理人(当時は、ひろゆき、こと、西村博之さん)は、電話番号、住所をサイトに出し、かつメディアに顔出しするというギャップがある

2ちゃんねる運営で一番難しいのがサーバ維持(サーバの運営工学)

  • 従量制のサーバではなく、定額制のサーバを契約して、2ちゃんねるを運営する形をとっていたので転送量が多く、サーバ業者から追い出される
  • そこを追い出されないように話あったり、揉めたりしながら、新たなサーバ業者と契約して・・・と何とかサイトが潰れないように交渉することが一番難しかった
  • ただ、西村博之さんは「揉め事」を楽しめる性格のようで、そこを切り抜けられた
  • たぶん「問題解決」自体が好きな人なのではないかと思う

当時は2ちゃんねるは誰のものか、わからなかった

  • 「会社」「団体」・・・国に認められた何かの組織ではない
  • 管理人とボランティアで作られていた
  • 広告による収益もなかった