本『2ちゃんねる宣言』(井上 トシユキ)の感想
2ちゃんねる宣言(増補版)挑発するメディア (文春文庫PLUS)
- 作者: 井上トシユキ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/09/20
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
単行本の初版は2001年12月。
日本のインターネットの大きなコミュニティ「2ちゃんねる」について書かれていた本。読んでいると、当時の2ちゃんねるやインターネットの匂いがしてくる。タイムスリップしたような感じ。
今はみんながスマートフォンをもち、手軽に生活に密着したインターネットの使い方をする時代だが、この本の時代はその前。
インターネットが従量制から定額制になって普及率が上がり、多くの家庭で PC でインターネットをするようになり、インターネット人口が増えていった時代にユーザを取り込んで行った2ちゃんねる。
以下のところが面白かった。
初期に考えられていた2ちゃんねるの役割
- 本業(ホームページ制作など)のための広告媒体
- いろんな人が集まるサイトを作れば、それが集客装置になり、本業に繋がるだろうと考えてやっていた。しかし、途中からはそれはどうでもよくなった
インターネット上のサービスの中で起きた問題の責任の所在
- 「プロバイダ責任制限法」が施行される前までは、インターネット掲示板にかかれる誹謗中傷、脅迫などの責任が誰にあるかが不明だった。
- なので、そこに書かれていることの責任が最終的に掲示板の管理人にかかる場合もあった。
- プロバイダ責任制限法 http://www.isplaw.jp/
運営スタンス
- 当時の2ちゃんねるの運営スタンスは(今もそうかもしれないが)、基本的には「場の提供」。
- ユーザが使いやすい機能がある(匿名、トリップ)、ユーザによるコンテンツ(書き込まれた情報)が溜まりやすいシステムを狙う
- Consumer Generated Media
匿名
- 誰でも匿名で何でも書ける(NGワードはある)。実態が見えない集団による書き込みサイトのような側面もあるが
- 一方、管理人(当時は、ひろゆき、こと、西村博之さん)は、電話番号、住所をサイトに出し、かつメディアに顔出しするというギャップがある
2ちゃんねる運営で一番難しいのがサーバ維持(サーバの運営工学)
- 従量制のサーバではなく、定額制のサーバを契約して、2ちゃんねるを運営する形をとっていたので転送量が多く、サーバ業者から追い出される
- http://cocoa.5ch.net/test/read.cgi/unix/998695422/
- 当時、この「転送量の問題」に対して、転送コンテンツを gzip 圧縮する方策が話されているのが見える
- そこを追い出されないように話あったり、揉めたりしながら、新たなサーバ業者と契約して・・・と何とかサイトが潰れないように交渉することが一番難しかった
- ただ、西村博之さんは「揉め事」を楽しめる性格のようで、そこを切り抜けられた
- たぶん「問題解決」自体が好きな人なのではないかと思う
当時は2ちゃんねるは誰のものか、わからなかった
- 「会社」「団体」・・・国に認められた何かの組織ではない
- 管理人とボランティアで作られていた
- 広告による収益もなかった