映画『キューブ(CUBE)』の感想
すごく良い。
カナダの低予算映画。
この次回作もあるが、キューブは最初の作品だけが、おすすめである。
以下、ネタバレ全開の感想。
最初に死んだのは誰?
映画冒頭にまず挨拶がわりに、ひとりの男が、キューブのトラップで死ぬ。
この人物の職業、役割は何なのか気になった。
というのもこの映画、全員にキューブ脱出のための能力がそれぞれある。
クエンティン
警察官の男。肉体的な強さで皆をリードする。またメンバーをまとめるリーダー的存在。
ハロウェイ
医師の女。メンバーの怪我の手当て。また後述する障害を持つと思われる<カザン>のメンタルケアを行う。
レヴン
数学専攻の女学生。キューブ脱出に繋がる数学知識を持ち、キューブの部屋番号の謎を解析する。
レン
脱獄名人の老人。センサーや罠に詳しく、キューブ内に仕掛けられたトラップをみやぶり、序盤のメンバーがまだキューブの数学ルールに気付いてない場面で命を救う。
ワース
建築士の男。キューブの外側の ”殻” を設計した。建築物としてのキューブの構造を唯一知る人物。
カザン
なんらかの精神障害をもつと思われる男。オドオドして怯え、落ち着きがない。おそらく自閉症や、サヴァン症候群の人物をイメージしている役。並外れた暗算能力があり、<レヴン>が解くのに時間のかかる計算をすぐ答えられる。
これらの人物をみると、このチームに欠けている役割は聖職者、つまり、牧師か司祭であると考えらえる。
じっさい、このメンバーは、肉体的なリーダーのクエンティンによって序盤はまとめられるが、途中からは脱出への焦りや絶望感から、内紛をおこし、最後は殺しあってしまう。
精神的なリーダーがいて、パニックになったときに、宗教の救いがあれば、チームの和が乱れずに済んだかもしれないと思うわけである。
この映画の教訓は?
作者が教訓を残したい映画かどうかは不明だが、この物語から教訓は得られる。
多様性が人間の危機を救う
カザンはまったく邪魔にされていたが、彼がいなければ、脱出は破綻していた。人間はそれぞれ違うことが他の生物よりも優れている。焦ってはならぬ
結果的に、最初に居た部屋に戻ってくる話である。力で押さえつけると、力で反発される
クエンティンは次第に反発されるようになる。
この映画は何なのだろう?
こういえる。
キューブというのは現代のなかにある、地獄である。
それは、整列されていて、規律にしたがっていて、理不尽に身近に死がある。
その地獄の中に我々はすでにいるし、気づいていなくても、ある日、きちんとそこに居ることに気づくようになっている。
その中で皆、恐怖に押されて先にすすむ。地獄のなかで、次第に人生の目的が"生き残る"ことになってゆく。しかし本当は皆でこの地獄の狂気について話し合うべきだし、魂が追いつくまで動くべきではない。
だがしかし、宗教が先に殺された地獄のなかで、誰も安寧できず、どんどん進んでしまう。生き残り続けて、気づいた時、ようやく"最初の地点"に戻ってこれて、そこで死ぬ。